後遺障害による逸失利益の計算方法

代表弁護士 木谷 倫之 (きだに ともゆき)

事故によって後遺障害が残ると、今後の生活に制限がかかる場合があります。場合によっては「将来得られるはずだった収入も得られなくなる」という事態が発生します。

これを賠償してくれるのが「逸失利益」に対する賠償金です。

このページでは「逸失利益」に関する基礎的な部分と、計算方法をお伝えします。

「逸失利益」とは何か

「逸失利益(いっしつりえき)」とは、不法行為がなかったら得られたであろう利益のことです。交通事故に関して言えば、「後遺障害によって得られなくなった将来収入」の部分と言えます。

例えば、普段会社員として働いているような方が、交通事故が原因で働けなくなってしまったとしたら「もし交通事故さえなければ会社員として定年まで勤めて退職金を得られた」と考えるのは自然なことです。このような利益は法的に保護されるべきですので、交通事故の加害者は被害者に対して損害賠償をしなければならず、保険に加入している場合には保険会社はその金額を支払うことになっています。

「逸失利益」の計算方法

逸失利益の計算は下記のように行われます。

  • (基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間)×(労働能力喪失期間によるライフプニッツ係数)

それぞれの項目について詳しく見てみましょう

基礎収入

基礎収入とは、事故に遭う前の実際の収入のことです。

自賠責基準と裁判所基準で算定方法がことなります。

自賠責基準の場合

有識者

交通事故前1年間の収入額と後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額。ただし,以下の場合は,それぞれに定める金額。

  • ア 35歳未満であって事故前1年間の収入額を立証することが可能な場合は,交通事故前1年間の収入額,全年齢平均給与額の年相当額及び年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額
  • イ 事故前1年間の収入額を立証することが困難な場合
  • (ア) 35歳未満の場合は,全年齢平均給与額の年相当額又は年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額
  • (イ) 35歳以上の場合は,年齢別平均給与額の年相当額
  • ウ 退職後1年を経過していない失業者(定年退職者等を除く。)は,ア・イの基準を準用。ただし,「事故前1年間の収入額」とあるのは,「退職前1年間の収入額」と読み替える。
幼児・児童・生徒・学生・家事従事者

全年齢平均給与額の年相当額とする。ただし,58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は,年齢別平均給与額の年相当額とする。

その他働く意思と能力を有する者

年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし,全年齢平均給与額の年相当額を上限とする。

裁判所基準の場合

社員の場合には給与、自営業者の場合には確定申告の額を利用します。収入のない学生・主婦・無職の場合には「賃金センサス」という統計を利用した平均賃金に基づいて計算します。

会社役員の場合や若い人の場合でも賃金センサスを適用をすることもあります。

労働能力喪失率

労働能力喪失率は「事故でどれくらい労働できなくなったのか」というもの表すものです。これについては後遺障害等級に応じて喪失の割合が、自動車損害賠償保障法施行令別表第1及び第2に基づき決めらています。

要介護1級 100/100
要介護2級 100/100
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、事故によってどの程度の期間損失を被ったのかというものを表すものです。

原則として67歳までの期間で計算することになります。ただし、67歳を超える方に関しては、平均余命の半分で計算を行います。

また、12級13号もしくは14級9号に認定された場合には例外的な5〜10年で計算する場合もあります。

労働能力喪失期間によるライフプニッツ係数

逸失利益は将来に受け取ることができた利益を今すぐ一括で支払ってもらうことになります。その金額を貯蓄するなどした場合には利息を受け取ることができるようになります。

そう考えると、事故という偶然の被害によって利息を受け取るのが早くなったという事になるので、その調整のために用いられるのがライプニッツ係数ということになります。

逸失利益の計算金額を最終的に決めるのは裁判所

逸失利益がいくらかの計算に争いが生じた場合には、どのようにして最終的に決定されるのでしょうか。

もし当事者間で合意をして決めるのであれば、合意した金額が逸失利益の金額になります。一方、当事者間で主張する金額に差があり合意ができない場合には、保険会社を相手に訴訟を起こして裁判上の主張をし、裁判所が決定をします。

無職でも逸失利益は得られるのか?

逸失利益は得られなくなった将来収入を賠償するものです。ですから、無職者は逸失利益を得られるのかと疑問に生じる方も多いと思います。

無職者が逸失利益を得られるかどうかは以下がポイントとなります。

労働能力がある場合

働いていない原因が、労働能力の欠如であった場合は逸失利益が認められない可能性が相当程度あります。例えばもともと就労不可能であるほどの障害を抱えていた場合、また高齢である場合などがこれに該当します。

労働意欲がある場合

事故前から労働意欲がなかった場合も認められない可能性が出てきます。これは生活実態によって判断されることになります。逆に言えば、一時的に仕事についていなかったが就職活動は行なっていたという場合は当然逸失利益が一定程度認められる可能性があります。また、20代という若い年代であれば無職でも一定程度の逸失利益が認められるケースもあります。

後遺障害を負い弁護士をお探しの方は当事務所にお任せください

後遺障害が残る場合、今後の生活が制限されるケースもあります。こうした障害は決して金銭的に埋められるものではないのかもしれませんが、せめてもの被害者の皆様には適正な賠償金が支払われるべきだと当事務所は考えています。

当事務所では逸失利益の計算に争いがある場合はもちろん、慰謝料の請求や後遺障害の等級認定など、交通事故事件には広く専門性を有しており、これまで2,000件以上の交通事故の解決をお手伝いさせていただきました。お悩みがある場合にはぜひご相談ください。

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